MAD DAEDALUS
マッドダイダロス
 
  プロローグ ーThe wreckage of Ariadne アリアドネの残骸

 
  紀元前2000年

ダイダロスはアテネの天才的な科学者、また建築家としてその名を全土に轟かせていた。しかし、アシスタントをしていた甥がめきめきと頭角を現わし、高い評価を得るにつれてダイダロスは若い科学者を妬むようになった。そしてついに嫉妬に駆られて彼を殺害し、断罪されてクレタ島に流された。

ダイダロスはその流刑の地で偶然に謎めいた遺跡を発見する。それはとても古い、多分先史時代のものーーー丘に半分埋もれた巨大な宇宙船の残骸だった。

その船がいかなる目的を持って地球に辿り着いたのか、何故難破したのかを示す証拠は何も残っていなかった。それはひどく破壊されており、いかにしてももう飛ぶことは出来そうになかった。しかし驚いた事にメインコンピュータはまだ機能しているようだった。

ダイダロスはそのコンピュータの秘密を知り、それを動かしてみたいと思った。何年も何年もかけて研究し、ある日ついにコンピュータに火を入れることに成功した。

彼の驚きと喜びはいかばかりであったろうか。彼の目の前に息を飲むほど美しく若い女のホログラム映像が現れた。「こんにちは」コンピュータは彼に語りかけた。「私の名前はアリアドネ。」

アリアドネの能力に深く感動したダイダロスは彼女に取引を持ちかけたーーー彼女を修理する事を条件に彼女の持っている科学技術を彼に教えることーーーアリアドネは彼の申し入れを承諾した。

異星の技術を得たダイダロスは、クレタ島の主、半神半人の独裁者ミノス王の歓心を引くために次々と風変わりな機械や兵器を開発した。それらはもちろんミノス王をいたく喜ばせ、王は彼の作り出すものを用いて繁栄と権力を欲しいままにした。

ミノス王は遺跡の丘にアリアドネの神殿を建立し、彼の民にアリアドネを神の使いとして祀るように命じた。彼の目的は遺跡の丘を不可侵の聖地として人々をアリアドネから遠ざけることにあった。王はまた異星の技術の秘密を独占するためにダイダロスをクノッソス城に軟禁した。

ダイダロスの多くの献上品の中にはミノス王自身の命令で作られた生物兵器があったーーーミノタウロス。ところがミノタウロスは失敗作だった。制御不能で凶暴なこの生物兵器はその上人食いで、あまりにも危険な代物だった。しかたなくミノス王はダイダロスに迷宮を作らせ、これを監禁することにした。





  Loony Labyrinth
ルーニーラビリンス


 
  ミノタウロスの開発の失敗とそれの引き起こした被害の大きさはダイダロスを多いに失望させ、彼の研究に暗い影を落とした。そんなある日、深い怒りと後悔に苛まれている彼の前に若者が現れた。 時間旅行を可能にする機械、ルーニーマシンを携えた 彼は未来から来たテセウス、神話を成就するためにこの時代にやってきたのだった。

テセウスの目的はミノタウロスを倒して生け贄を解放すること。ダイダロスとアリアドネは彼を利用する事を考えた。未来に行く事ができれば彼女の宇宙船を修理するために必要な技術や設備を手に入れることができるのではないかと考えたのである。

彼らは、彼らを未来に連れていく替わりにミノタウロス退治を手伝おうとテセウスに持ちかけた。彼らはミノタウロスを倒すための武器を作るため、テセウスに今は巨大な迷宮の一部になっている宇宙船の残骸を探索して必要な部品を集めさせることにした。

そのようにしてついに武器は完成し、テセウスはミノタウロスを倒す事に成功した。しかし、ミノタウロスが倒れたまさにその瞬間、ルーニーマシンは突然誤動作を起こしテセウスを未来へと連れ帰ってしまう。アリアドネとダイダロスを紀元前2000年のクレタ島に残したままに。

テセウスは彼らを現代に連れ帰る約束を果たせなかったことを残念に思うが、彼にはルーニーマシンを起動するすべはなく、諦めるしかないのだった。


  Spatiotemporal rendezvous
時空のランデヴー


 
  クノッソスでは置き去りにされた二人が討論を重ねていた。ダイダロスはルーニーマシンを初めて見たときからそれが彼の作ったものーーーこれから作るものだと知っていた。なぜならマシンには彼自身のサインとアリアドネの名前が線文字Aで書かれていたからだ。

彼は考えた。ルーニーマシンは詳細に調べたので、それがどのように機能するのかは解っている。アリアドネをルーニーマシンに改造することが出来るかもしれない。数千年先の未来へ行って彼女の宇宙船を修理する術を手に入れることができたら・・・しかしそれには大きなリスクが伴う。改造するにあたっては彼女の人工知能に回復不能な障害を与える可能性があるのだ。しかしアリアドネは 他に選択肢がないことを判断し 、彼のプランを受け入れた。 ーーーーー 遂にダイダロスは無事に彼女の改造を完了した。彼は今まさに時間旅行に旅立つプログラムを起動しようとしている。彼の望みは叶うだろうかーーーアリアドネと共に遥かな宇宙を航海することができるのだろうか?


  エピローグ ーEscape, farewell, and again... 脱出、別れ、そして再び

 
  しかしなんということだろう!ダイダロスの指がスイッチに触れようとしたその瞬間、ミノス王の放った兵が彼らを取り囲んだ。彼らの計画を知った王はもちろん彼らを手放すわけがなかった。ダイダロスとアリアドネはどうあろうと王の一番価値のある財産、彼の繁栄の源なのだから。

半神の独裁者によって命の危険にさらされていたにもかかわらず、 ダイダロスには諦めるつもりは全くなかった。彼は自身のクローンであるアシスタント、イカルスと共に飛行装置を開発し、ルーニーマシンに改造されたアリアドネとルーニーストーンーーーマシンの動力源を携えて城を脱出することに成功した。

しかし飛行中の事故によってイカルスは墜落し、彼が持っていたルーニーストーンはばらばらに飛び散って失われてしまった。

ダイダロスはルーニーストーンを求めて長い旅に出たが、見つける事はついに叶わなかった。ルーニーストーン無しにはルーニーマシーンを起動することはできない。彼はマシーンを神殿の奥深くに隠し、その壁の上に長い年月の後にエバンジェル卿に発見されることになるメッセージを彫った。彼は深い悲しみに暮れながらアリアドネにいとおしげに別れを告げ、何処へともなく去って行った。

そして今、4000年の時を経て再びルーニーラビリンスの物語が始まる。



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