The Fairy Tower™ Story

CHAPTER 6 長い眠りの時

長老は妖精たちに人と直接関わる事を禁じていた。そこで妖精たちが人の街へ行くときには塔で作ってもらった隠れ蓑を身につけていく。でもそっかしい者や悪戯好きな者もいるので、人間に姿を見せてしまうことも少なくなかった。 贈り物の好きなドウォーフなどが仲良くなった人にいろいろな道具を与えたりすることもあった。

それらの道具の持つ力は、人には理解できない仕組みで発揮されるので魔法と呼ばれるようになる。 人は妖精が魔力を持っていると考えた。そして、ついに妖精を捕らえその魔力を利用しようとする人が現れた。魔力を求めて人が争い、その争いには魔力が用いられた。

長老はゴーレムに尋ねた。
「なぜこんなことに」
「知性と理性が成熟するには長い年月が必要なのです」
「それにはどのくらいかかるのかね」
「人が途中で滅ばなければ、あと1万年前後と予想されます」

長老たちは、あらためて妖精は人の世界に一歩たりとも踏み込んではいけないと掟を定めた。 人はほどなくして科学を始めて人間の世界を広げ続け、妖精と魔法は伝説になった。 妖精の世界と人の世界との門は巧妙に隠してあるのだが、時々何かの拍子に彷徨い込んでくる人間たちもいた。彼らが見聞きしたことはおとぎ話、または奇跡として伝承され、科学を信じるようになった人間たちには現実のこととはうけとられなくなった。それは妖精と人にとって好ましいことであった。

楽に魔法で力を得ようとする欲深い人々の探索はことごとく失敗に終わっていた。しかし、時が過ぎ、人間がさらなる力を得れば必ず人は妖精の世界に入り込んでくるだろう。賢い人であればよいが、そうでなければ大変な事になる。

長老たちは塔へ赴き、ゴーレムにその憂慮を告げた。 ゴーレムは塔の心臓部に長老たちを連れて行った。塔は長老たちの心を直ちに読み取ると、彼らの心に直接語りかけてきた。塔はあるプランを提示し、それを実行するかどうかの判断は長老たちに委ねると伝えた。

長老たちはその提案に驚き、とても受け入れることはできなかった。ほぼ同時に全員がはっきりと答えた。 「それをしてはならぬ」

塔はプランを実行する替わりに妖精の世界の外に彷徨いでたものをすべて塔の中へと回収し、長老たちにはゴーレムを操る方法を伝授した後に長い眠りについた。こうして妖精の世界と人の世界の門は閉ざされた。

それでも時折妖精がこっそり人の世界の様子を見に来ることがある。彼らが何も言わずにすぐに姿を消してしまうのは、人間の文明がまだ成熟していないという証拠である。 ー終ー

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塔はプランを実行する替わりに妖精の世界の外に彷徨いでたものをすべて塔の中へと回収した